2022年3月24,25日の二日間にわたり、東京大学ニューヨークオフィス(UTokyoNY)イベントとして、東京大学ニューヨークオフィスにてデジタルアーカイブシンポジウムを主催しました。
シンポジウムには、日本、アメリカ、カナダ、ドイツから25名の研究者、アーカイブ専門家、キュレーターが出席し、建築デジタルアーカイブに関する知見を共有し議論を行いました。
シンポジウムではSEKISUI HOUSE – KUMA LABのアドバイザーである加藤耕一教授が開会の挨拶を、国際アドバイザーのバリー・バーグドール教授が基調講演を行いました。また、ディレクターの平野利樹特任講師はパネリストとして発表を行い、セン・クアン特任准教授は全体を通して司会を務めました。
Barry Bergdoll(Columbia University)による基調講演
Martien de Vletter(Canadian Centre for Architecture)による発表
平野利樹(東京大学)による発表
1日目 (*はオンライン参加)
開会の挨拶・基調講演
発表者: セン・クアン (東京大学), 加藤耕一* (東京大学建築学専攻), Barry Bergdoll (Columbia University)
概要: 本シンポジウムの企画を行ったクアン特任准教授と、加藤教授が開会の挨拶を行い、Bergdoll氏が建築アーカイブの諸問題について基調講演を行った。
建築デジタルアーカイブにかかわる機関の概要紹介
発表者: 田良島哲* (国立近現代建築資料館), 森本祥子* (東京大学文書館), 角田真弓* (東京大学建築学専攻), 山崎幹泰* (金沢工業大学), William Whitaker (Architectural Archives of the University of Pennsylvania Weitzman School of Design), Andres Lepik (TU Munich Architekturmuseum), Paul Galloway (Museum of Modern Art, New York), Barry Bergdoll (Columbia University)
概要: 建築デジタルアーカイブにかかわる各機関の概要紹介を行った。
ボーン・デジタル(Born Digital)コレクションについて
発表者: Martien de Vletter (Canadian Centre for Architecture), Ann Whiteside + Sara Rogers (Harvard Graduate School of Design Frances Loeb Library), Allison Olsen (University of Pennsylvania Weitzman School of Design Architectural Archives)
概要: 建築アーカイブにおいてはこれまで図面や模型など、フィジカルなモノを対象として取り扱ってきた。しかし、建築領域におけるコンピューターの活用の普及に伴い、ボーン・デジタルと呼ばれる、最初からデジタルデータとして作られた素材もアーカイブの対象として取り扱う必要性が高まってきている。本セッションでは、そのようなボーン・デジタルの素材をどのようにアーカイブ資料として取り扱うかについて、各機関の取り組みが発表され、議論が行われた。
2日目
保存修復と画像撮影について
発表者: Debora Mayer* + Kelli Piotrowski* (Harvard Library Weissman Preservation Center), Irina Gorstein (Harvard Graduate School of Design Frances Loeb Library), Bill Comstock* + David Remington* (Harvard Library Imaging Center),
概要: 建築アーカイブにおける収集物の中で、紙を支持体とした建築図面は大きな割合を占めている。そのような建築図面の保存や劣化や汚損などの修復には、美術作品のそれとは異なる独自の知識・技術が要求される場合がある。また、建築図面の多くは大判で、また一つの建築物につき大量の枚数が存在することが多く、研究などで活用するにあたり、デジタルスキャンを行い、画像データとして保管することが重要になってきている。本セッションでは、建築図面の保存修復、デジタルスキャンの技術的な知見についての発表がされ、議論が行われた。
3Dデータ化について
発表者: Oliver Elser* (Deutsches Architekturmuseum), Gary Riichirō Fox (Getty Research Institute), 平野利樹 (東京大学)
概要: 近年、フィジカルなモノを3次元情報データとして取り込む3Dスキャン技術が急速に発達・普及してきている。建築アーカイブにおいては建築模型もその収集・研究対象の一つであるが、本セッションでは、建築模型をどのように3Dスキャンし、スキャンデータを活用するかについて、技術的・思想的な考察が行われ、議論された。
資料保管とアクセスについて
発表者: Justine Couture (Canadian Centre for Architecture), Ann Whiteside + Sara Rogers (Harvard Graduate School of Design Frances Loeb Library)
概要: 建築アーカイブにおいて、図面・模型・デジタルデータなど媒体が多様化する中、どのように資料を収集・分類し、閲覧希望者がアクセスできるようにするかが大きな問題となってきている。またデジタルデータの閲覧のためには、そのデータが作成された特定のOSやソフトウェアを閲覧環境に整備する必要が出てきている。本セッションでは、各機関において、どのように新規収蔵資料を受け入れ、処理するかについての方法論や、デジタルデータの閲覧環境の整備についての取り組みが発表され、議論が行われた。
教育・研究、展覧会・出版における建築デジタルアーカイブの活用について
発表者: Cristina Steingräber (ArchiTangle Publisher), Ines Zalduendo (Harvard Graduate School of Design Frances Loeb Library), Paul Galloway (Museum of Modern Art, New York)
概要: 教育・研究、展覧会・出版においてどのようにアーカイブを活用できるのかが具体例の紹介を中心に発表され、議論された。