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Living Tree Furniture Prototype Research

SEKISUIHOUSE–KUMALABでは、⾃然素材の特性を活かした設計⼿法の探究として、伐採後に廃棄予定であった広葉樹の⽣⽊を⽤いて家具を試作するプロジェクト「LivingTreeFurniturePrototypeResearch」に取り組みました。

⼀般的に流通する規格化された⽊材とは異なり、⼭や庭先に⾃⽣する樹⽊は形状が不ぞろいであるため、伐採後の加⼯や活⽤が難しく、多くが放置されるか⼗分に活⽤されずに廃棄されていました。特に「広葉樹の⼩径⽊」は幹が曲がっており、乾燥後の変形も考慮する必要があるため、家具や建材としての利⽤が⾮常に困難だと考えられてきました。

本プロジェクトでは、デジタル技術を設計に活⽤することで、複雑な形状を正確に扱うこと可能にしています。設計から⽊材加⼯までコンピュータで制御することで、材料ごとの形状の違いを許容しつつ、接合部の設計と加⼯組み⽴てを容易にしています。形状の異なる様々な⽊材でも同様の加⼯と組み⽴てが可能であり、再現性のあるプロセスを前提としたデザイン⼿法の検討を⾏いました。

3DスキャンやCNC加⼯などのデジタル技術を設計に取り⼊れることで、⼿⼊れされず放置された⾥⼭の整備や建設⼯事のために伐採予定の思い⼊れのある⽊々など、これまで活⽤が難しいと考えられていた様々な天然⽊の活⽤の選択肢を広げることができます。

 

1. デジタル木取りのデザイン

まず、伐採予定の樹⽊が地⾯から⽣えている状態で3Dスキャンを⾏い、コンピュータ上で⽊取りをシミュレーションしました。スキャンデータにより、樹⽊ごとの固有の形状に合わせた切り⽅の検討を伐採前に⾏うことが可能です。⼀本の樹⽊から⼊⼿可能な⽊材のバリエーションと様々な組み合わせ⽅の可能性を検証しながら、製材の計画を⽴てました。欲しい形から材料を調達するのではなく、そこにある材料からできる形の可能性を掘り下げることで研究を開始しました。

2. 曲がった樹木の斜め製材

⼀般的な製材機を使って曲がった⼩径⽊を挽くための加⼯条件を材⽊店の⼯場で打ち合わせしました。製材機は⼗分な太さの⽊材をまっすぐに挽き、同じ形に整えることを前提としていますが、今回の対象のような⽊材では効率的に同じ⼨法に製材することができません。斜めにカットする単純な操作により、⽊⾃体の形状を活かしながら⼀つずつ部材ごとに⻑さや形状の異なるユニークな部材を製材しました。

※製材と人工乾燥にあたっては地域の材木店(田村木材店)に協力していただきました。

 

3. 乾燥収縮による変形を許容する精緻な3Dスキャン

乾燥過程で⽊材はそりやねじれなどの変形が⽣じます。広葉樹の⼩径⽊では変形が⾮常に⼤きくなることがわかっており、個体差や条件により変形量が異なります。正確に予測することは難しいため、変形後の⽊材を⾼性能ハンドスキャナーで正確に3Dスキャンし、データ化しました。

 

4. CNCによる接合部の正確な加工

⽊材の形状データをもとに接合部の検討を⾏いました。繰り返しの組み⽴て解体を容易にし、⽊材だけで⾃⽴させることを⽬指して、接合部には⾦具を使わないジョイントを計画しました。複雑な⽊材同⼠の交差した形状を正確に把握し、データの通りに機械加⼯を⾏うことで、熟練の⽊材加⼯技術を持たない学⽣だけで全てのパーツの加⼯を完了しました。

 

5. 人の手による組み立て – 木材同士の支え合い

⽊材の組み⽴ては⼈の⼿だけで⾏えるように、重量のある広葉樹は互いにもたれかかることで⽀える単純な構造を基本ユニットとしました。⽊材⾃体に重さと厚みがあるため、しっかりとかみ合うことで⼗分な強度を発揮します。将来的には重量や接合部の強度についても計算可能な要素として設計プロセスの中に取りいれることや、別の材料と組み合わせてスケールをあげることも視野にいれています。

 

6. プロトタイプの完成

実際にテーブルやベンチなどに活⽤できる家具の試作をケヤキとサクラの⽊で⾏いました。⼀本のケヤキの⽊材からベンチタイプとテーブルタイプの製品を試作し、サクラの⽊からは複合タイプとして実験的に複雑な形状で⽊を組み上げた家具としました。3Dモデリングの検討に加え、実際に重さのある⽊材に触れながら強度や⽊材同⼠のバランスを確かめ、接合部の位置を微調整して最終形を模索しました。

今後の研究では、今回のプロセスの⼀部を⾃動化する設計⼿法への展開や、スケールをあげるための⼒学的な検証等を継続して⾏っていく予定です。規格化された材料以外の可能性を探ることから、循環型社会における資源について視野を広げながらデザインの可能性を探求していきます。

プロジェクトメンバー: 齋藤遼、藤堂真也、秋田次郎