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2022年度春学期国際デザインスタジオ(平野スタジオ)

期間: 2022年春学期(2022.04〜2022.07)

概要: 理想の投影対象としての住宅
住宅というビルディングタイプは、さまざまな理想の投影対象として扱われてきた。
たとえばマルク・アントワーヌ・ロジエの始原の小屋、ル・コルビュジエのサヴォア邸、ピーター・アイゼンマンの一連の住宅プロジェクトなどでは、特定の建築思想を端的に体現する媒体としての住宅のあり方が見て取れる。また住宅メーカーによる商品化住宅には、たとえば戦後の核家族など、その時代に理想とされた家族像・生活様式が投影されてきた。
ゴードン・マッタ=クラークの《Splitting》は、郊外の戸建住宅をチェーンソーで切断した作品であるが、これは住宅へ投影された家族像・生活様式の理想が、消費社会から押し付けられたものであることへの批判として見ることができる。

物質化された理想としての玩具の家
これらの住宅における建築家の理想や家族像・生活様式の理想は、建築物として物質化する過程で機能・構造・予算・敷地などの制約を受け、何らかの妥協が発生する。たとえばアイゼンマンはそれを深層的構造と表層的構造という概念を用いて論じている。
玩具の家もこれらの住宅と同様、家族像・生活様式などの理想が投影されたものであるが、建築物ではなく玩具として物質化されているために、建築物が持つ制約から自由な状態であるといえる。

純粋視覚化された理想としてのレンダリング・ポルノ
昨今のインスタグラムなどのSNSでのトレンドとして、「レンダリング・ポルノ」が挙げられる。レンダリング・ポルノとは、CGで写実的に描かれた架空の空間の画像で、その多くにはベッドやソファ、テーブル、浴槽などが配され、住空間のような設えとなっている。さまざまな批評が指摘するように、レンダリング・ポルノは無重力感、静寂感、生物の不在感、不気味さといった感覚を持っていることが特徴である。
コロナ禍の世界中でロックダウンが行われる中でトレンドとなったレンダリング・ポルノは、現実の住空間に閉ざされた人々が持つ、極度に純化した住空間の理想が純粋な視覚情報として投影されたものとして見ることができる。

このスタジオでは、理想が物質化されたモノとしての玩具の家や、理想が純粋視覚化されたとイメージとしてのレンダリング・ポルノを通して、住宅における理想のあり方を考察し、住宅の設計に結びつけていくことで、住宅の(さらには建築の)新しい美学の探究をおこなう。

詳細:スタジオ課題文

+2022.5.24 中間講評会
ゲスト:津川恵理(東京藝術大学)

+2022.7.22 最終講評会
ゲスト:今村創平(千葉工業大学)、寺田慎平(ムトカ)

+学生成果物

Chengzhe Zhu

 

野口雄人

 

Hortense Majou

 

阿部公平