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Tokyo Creative Salon 2025出展

2025年3月13日から3月23日まで開催されたクリエイティブの祭典「Tokyo Creative Salon 2025」(Tokyo Creative Salon 2025 以下:TCS 2025)に出展しました。

今回の展示では「SEKISUI HOUSE – KUMA LAB」の5年の歩みを紹介するとともに、「『EXCESS』-過剰性の時代に建築はAIと何ができる?」と題し空間を構築。平野スタジオが過去3年間取り組んできた「過剰性のニワ」をテーマにした作品を展示しました。物質や情報が過剰にあふれる過剰性の時代に対し、建築という領域はどのように対応できるのかを問題提起し、平野利樹特任講師のもと国内外から集まった24人の学生が最新の生成AIテクノロジーを活用して彼らのアイデンティティを含め個性豊かに表現しました。

 

展示概要
期間:2025 年 3 月 13 日(木)~3 月 23 日(日)
場所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目31−21 ハラカド 4F ハラッパ内
詳細 URL:https://www.sekisuihouse.co.jp/kumalab_excess/

 

■イントロダクション

私たちはいま、物質や情報が過剰にあふれる「過剰性の時代」を迎えています。ある研究によれば、2020年頃には地球上の人工物の総量が生物資源を上回ったとされ、このような物質の過剰化は、人類の活動が地質学的レベルにまで影響を及ぼす「人新世」という概念を生み出しました。これを受けて、「人工」と「自然」による従来の二分法も再考を迫られています。

一方、この約30年間のインターネット普及の過程で、人類は膨大なデータをネット空間に蓄積してきました。こうした情報の過剰化は、学習データを基盤とする生成AIの出現を促し、いまや人間の介在なしに新たな情報を大量に生み出す段階にまで至っています。これまで人間にしかないとされてきた創造性は、こうしたAIの台頭によって揺らぎ始めています。

このような過剰性の時代に対して、建築という領域はどのように応答できるのでしょうか?
東京大学大学院建築学専攻内の設計演習として開講する平野利樹スタジオでは、2022年から生成AIを活用しながらこれまでの建築設計とはまったく異なるアプローチによってこの問いに取り組んできました。
積水ハウスはこれまで、住宅の長寿命化、資源の適正利用など、 事業を通じて地球環境に配慮した住まいづくりを行ってきました。住宅部材と原材料の循環利用に取り組む領域においては、高度な資源循環体制を維持するため、広域認定制度に基づく 「積水ハウスゼロエミッションシステム」を構築しています。当社商品の生産と施工(新築 、アフターメンテナンス、自社物件リフォーム)の4部門で発生する廃棄物の抑制と回収、およびリサイクルの仕組みです。加えて住宅に必要な部材や原材料の循環利用にも取り組み、サプライヤー様と共に持続可能な社会の実現を目指す取り組みを続けています。(循環する家―Circular Design from House to House)

過剰化した世界のなかで私たちが今後どのように生き、思考し、創造していくのか、みなさんと一緒に考えたいと思います。

 

■スタジオについて

平野スタジオは、建築の枠組みを超えた創造的実験の場として、一学期を通して大きく3つのステップで構成されています。

ステップ1
スタジオは、従来の機能性や経済性、政治性といった合理性に依拠した設計アプローチを離れ、個人の内面に潜む「オブセッション」から出発します。シュールレアリスムにおける自動記述の実験は、自身の無意識の中に深く潜り込む試みとして、筆記の過程で「私」といった主語が次第に消失していく様子を観察し、単なる個人的領域を越えて集合的無意識へと接続されていることを示唆しています。スタジオでは、生成AIを活用したプロンプトの自動記述と画像生成のフィードバックループを通して、こうした内面の表現を探求し、従来説明が困難だった内面的要素を「情報量の膨大さの美学」として昇華させる試みを行います。

ステップ2
第一段階で抽出されたオブセッションを、箱庭療法の考え方―個人の内面を砂や小物を通して外在化し、客観的に捉える―に基づき、「箱庭」という形で具現化します。生成AIで得られた二次元のデジタルイメージを、深度推定モデルや3Dモデル生成、動画生成AIなどの先端技術を用いて三次元のフィジカルなオブジェクトへと変換し、見えなかった内面の世界を物理的な空間として再構築する新たなアプローチを提示します。

ステップ3
最終段階では、前段階で形成された箱庭を基にプロジェクトを設計します(2022年・2023年は犬島を敷地として設定)。ここでは、内面から抽出されたイメージと具現化された空間が融合し、物質と情報があふれる現代における建築の新たな可能性や環境との対話を問い直します。最終的なプロジェクトは、映像やインスタレーションなど多様なメディウムで展開され、内面と外界、デジタルとフィジカルの境界を再考する試みとして具現化されます。

 

 

■クレジット
スタジオ指導
平野 利樹

受講学生
2022年度
久津輪 渓
クリストフ・ユダ
柴垣 映里奈
須藤 望
ステファノ・マルテッリ
ジュンヤン・ペン
チンユエン・ウー
ティンユー・シー
東野 真人
豊永 嵩晴
ピョートル・ニコライ・ヤンソン
マリア・グリンスカヤ

2023年度
飯塚 紀穂
石田 開
ネイサン・マン・タム・シェリングス
レオナード・クーミン
ヤスミーン・タバク
ユンカン・リー

2024年度
アリックス・ゴドフラン
イージン・リン
大滝 一朗
ジョルディ・ゴマエス
リグオ・ワン
ロレーヌ・テボー・ド・マルシリー