2021年度から始動していたKUMA LABのwebサイトのリニューアルが漸く完成し、公開されました!
ここでは、このサイトの特徴と、完成までの裏話を少しお話しさせていただきたいと思います。
① プロジェクトの始まり––LABの特徴を考える
まず、webサイトのリニューアルにあたって国内外のさまざまな大学研究室やFab施設、建築事務所、ギャラリー、美術館などのwebサイトを200ほどリストアップしました。建築事務所のwebサイトは趣向を凝らしたものも多く、プロジェクトの見せ方や整理の仕方、フォントや色による印象の差を学びました。特に大学研究室のwebサイトを見比べることで、大学研究室のwebサイトにおいて基本となる要素もわかってきました。
・研究活動の紹介
・所属する研究者、学生の紹介
・イベントや授賞の告知
そこで、KUMA LABに立ち返ってみると、通常の大学の研究室とちょっと違うかも?と思うようになり、KUMA LABの特徴を再考しました。
・KUMA LABには研究室に所属する学生がいない
・活動期間が5年間と定められている
・研究対象、関心領域が広範(異なる分野のファカルティが所属)
KUMA LABは隈研吾教授が東京大学を退官後、工学部の隈研吾研究室を解散してから設立された寄附講座です。KUMA LABは研究室のDNAを引き継いでいますが、工学部の研究室とは別枠で、積水ハウスさんの寄付のもと東大総長直轄のプロジェクトに位置付けられています。
② 本Webサイトのゴール設定
こうしてwebサイトを通して他の研究室と比べてみると、KUMA LABは独特で、何をやっている研究室なのかも分かりにくいということに気づきました。実際には、
3つの軸(国際デザインスタジオ-ファブリケーション-アーカイヴ)
3つの場所(T-BOX -イベント-パブリケーション)
歴史(アーカイヴ)と技術(ファブリケーション)の2つの側面を探求しながら、海外からの研究者や建築家とオンラインでもオフラインでも交流し、国際的に思考し、有機的な関係性やコミュニティを形成したいと考えています。そのため、「既存の箱を変えていく・超えていく」というイメージでロゴのデザインも依頼しました。
KUMA LABだからこそ集まる国際的な人材、先端的な情報をつくっていきたいと考えた時、イベント会場で人を集めるだけでなく、オンラインにおいても可視化し、強化に繋げられるプラットフォームが必要です。国際的な建築のコアコミュニティこそ、KUMA LABのwebサイトで見せるべきもの、見せたいものだと考え、2つの指針を決めました。
・コミュニティを可視化すること
・集まってくる関心を外に開くこと
「こんな人がこんなことをやっています!」「こんな関心がある人がここにいます!」という情報が積層されていくような場所にしたいです。学生、講師、スピーカー、KUMA LAB関係者が、KUMA LAB面白うそうだからフォローしておこうと、思い続けてもらえるような、ハブにできたら。
③ 本Webサイトの工夫
目的と特徴は決まったのですが、いざ、コミュニティや関心を可視化するというと、毛頭イメージがつきません。研究室のサイトということで、予算も限られており、アニメーションやチャット機能などは搭載できません。どうにかシンプルに見せたい、グラフィックの力だ!と思いたち、プロの手を借りれるよう奔走しました。
日本語も英語も構築的なデザインをされていて、タイポグラフィーの扱い方が特徴的なグラフィックデザイナー岡崎真理子さん、そして、豊富な経験とアート要素のグラフィックにも素養が深い萩原俊也さんに実装とディレクションをお願いすることができました。
コミュニティの可視化を目標としているので、メンバーページには気合いが入りました。いわゆる「おじさん」が並ぶような、ルッキズムに支配されたものをでないものを作りたいとは思うものの、人の顔というのは引きが強い。またメンバーと言っても、KUMA LABには所属学生がいません。教授、准教授、助教授とスタッフ4名で基本的には構成されていますが、その7名だけがKUMA LABコミュニティというわけでもないので、KUMA LABだからこそ集まってきてくれた人たちを「PARTY」と呼ぶことにしました。「Member」という所属を強調するようなニュアンスではなく、よりカジュアルで、楽しそうな雰囲気を出したいと思いました。
「画面を文字が残る印象にとどめたい!」、という岡崎さんの言葉がきっかけとなり、プロフィール写真として、顔写真の代わりに、本棚や本の写真を提供してもらうことにしました。本の表紙、本棚は文字の情報の画像でありながら、よくみるとどういう関心があるのか見えてきます。ジェンダーや国籍、年齢、外見に囚われず、それでいてそれぞれの個人の関心が「PARTY」のページで示せているといいなと思います。ぜひ、じっくり眺めてもらえたら嬉しいです。
個々人のページを開くと、Bioと共に、オリジナルコンテンツとして簡単なインタビューも掲載しています。
④ さいごに
オンラインの拠点をオフラインの拠点に接続する仕掛けも考えました。KUMA LABが運営するファブリケーション施設、T-BOXの展示壁、K-BOXに本webサイトへQRコードを貼りました。展示壁に格納されている模型のキャプションをQRコードからwebサイトに飛ぶことで、読むことができます。そのため、モバイルからのアクセスを重点的に考え、モバイルで見やすいデザインにも工夫を萩原さんにお願いしました。
また、オンラインの拠点であれ、物理的な拠点同様、足繁く通うのはなかなか大変なので(あり得ないので)、全ての拠点の活動を毎月総括するものとして、メールマガジンを発行することにしました。その入口をwebサイトに置いています。(建築学科らしく、動線も分かる範囲で整備したいと思いました。)
色々な方々のお力添えを頂きながら、やっとオープンできたプラットフォームですが、これからも「つくりながら考える」、「つくりながら残していく」というインターフェースを目指して、5年間の活動を実行しながら、記録しながら、その様子も公開していこうと思います。
改めて、この場を借りてグラフィックデザイナーの岡崎真理子さん、実装とディレクションを萩原俊也さんに感謝申し上げます。
Webサイト 企画・編集
服部 真吏